五章、乞巧奠
五、
西天に夕星が輝く。
夕顔小路に住まう琵琶師のもとに奇妙な客人があったのは、乞巧奠が数日後に迫る宵待ちの時分であった。平栄の地揺れのあと御身を預かっている蝶姫は、朝から外に出ていていなかった。この姫は近頃、できたばかりの友人のもとに足繁く通っている。もとより多感なところがあり、ことに皇祇皇子が行方をくらまして以来どこか気分の浮沈が激しかった姫だ。落ち着かれた、と琵琶師は孫を見守る老爺にも似た気持ちで仲睦まじい少女たちを見つめている。
琵琶師にとっても久方ぶりの休みだった。
独り身の気ままさで、屋敷に飾った舶来品の手入れをしていると、夕刻、家人から「東の君より遣いあり」と取り次がれたのである。
遣いを名乗る少女が抱いていたのは処女雪色をした見事な白鷺であり、黒い嘴に一通の文を咥えていた。文にはさして流麗とも下手とも思えぬ字で、今晩お屋敷に伺いたい、との旨が簡素に記されている。
どう致しますか、と客間にて遣いを待たせ、尋ねた家人に、「うむ」と曖昧に顎をさすり、琵琶師は黙考する。『彼』とはこの夏一度顔を合わせ、三年前の礼を懇切丁寧に受けていたがそれきりで、琵琶師の記憶の中ではどちらかというとまだ、眠たげに目をこすりながら兄に手を引かれて歩いていた子どもの姿のほうが強い。以前であるが、琵琶師は葛ヶ原の橘、瓦町の百川、といった一族と親交が深かった。橘八代が奥方を亡くした折は、都から出向き、得意の琵琶にて慰めたこともある。あのとき彼は物心つかぬ、幼子だった。
古いその記憶に、ふと感慨が沸いた。急に会ってみてもいいという気がしてきて、琵琶師はさらさらと書き付けた文を家人に託す。
しこうして、酉六ツ。宵待ちの刻限に、葛ヶ原領主橘雪瀬は琵琶師邸をおとなった。供には、これは見たことのない大柄な武人がひとり。白鷺といい、この巨漢といい、男の従者は皆一風変わっている。
「新羅卿」
不躾なおとないを詫びる折、今では珍しい本名のほうで男が呼んだので、「琵琶師、のほうで構わぬ。橘殿」と琵琶師は鷹揚にわらった。「では琵琶師さま」と言い直す男の声は、明朗だ。
「ゆるりと話すのは十年ぶりになるかのう。秋には、百川の娘御を娶ると聞いたが」
「ああ、そうですね」
「黒海が嘆いておったよ。あれは己が姫御をおぬしにやろうと息を巻いていたとて」
「あの方が姫を嫁がせたいのは、わたしではないでしょう」
黒海というのは網代あせびが首長を務める南海諸領の一島で、三年前雪瀬が捕縛された折、嘆願状に名を連ねた一族のひとつだ。雪瀬にとっては、大恩のある相手である。その黒海が近年、東方への接近をほのめかしている。東の盛都毬街の商人衆を意識してのことであるが、若く不慣れな領主を持ち、また貸しのある葛ヶ原は相手に最適と言えた。
琵琶師とてそれらを知った上で問うたのだが、雪瀬は黒海の狙いが葛ヶ原にあることを遠回しに皮肉っただけで、以上の言及を避けた。雪瀬が百川紫陽花と縁組をしたのは、都にのぼる直前である。許婚のあかしの銀簪を挿した女を、男は方々の宴に呼ばれるたび、連れ回した。黒海はあてが外れた格好だ。
「琵琶はまだ続けていらっしゃるのですか」
床の間に飾られた紫檀の琵琶のほうへ目を向けながら、男が問う。無論、と琵琶師は胸を張り、常は穏やかな双眸をからかうように細める。
「せっかくであるから、一曲聞いてゆくかの? 昔、おぬしに眠りこけられてからは腕もかなり上がった」
「あれは兄も寝ていたのだから、勘弁してください。それに、俺は無粋者で、琵琶師さまに限らず楽は苦手なんです。起きていられない」
「ふふ。乞巧奠で居眠りでもかましてみよ。首が飛ぶぞ」
「筝弾き姫の奏ですか」
下女が運んできた冷茶を啜って、緩く相槌を打つ。「――その、乞巧奠ですが」男が切り出したのは、琵琶師が湯椀を戻す間隙を狙ってだった。
「今日ここへおうかがいしたのは、乞巧奠のことで琵琶師さまに相談があったからなんです」
「相談、とな」
「ええ。乞巧奠で使われる筝の、十三本の弦について」
「弦じゃと?」
いぶかしみ、琵琶師は眉をひそめる。雪瀬は顎を引いた。
「乞巧奠当日、筝弾き姫が奏でる筝の十三本の弦。そのすべてを事前に取り替えることはできますか。誰の目にも触れぬように」
奇妙といえば奇妙な申し出に琵琶師は一層眉根を寄せた。冗談や何かの暗喩ではないらしい。証拠に、相対す男は真剣そのものの眼差しで、琵琶師の返答を待っている。
「目的を聞いてもよいかな、領主殿」
「乞巧奠が終わったら、お話しします。けれど、終わるまでは言えない」
「言えない。目的も意図も話さずに弦だけを替えよと申すのか、おぬしは」
「ええ」
いっそ潔いまでのふてぶてしさには、覚えがあった。苦りきって、琵琶師は顎をさする。わざとそう振舞っているのか、あるいは生来そうだったのか、この男は時折ふとした表情に、目の遣り方に、仕草に、話し方や声の抑揚といったものに早逝した兄の面影をひそませることがある。十九は、橘颯音が散った年齢でもあった。
「今年の筝弾き姫は氷鏡の藍と、絵島卿の末の姫、それに丞相の妾であったな」
ゆっくり反応をうかがう。雪瀬は眸を眇めただけで無言のうちに先を促した。
「あの娘のことはよく覚えておる。三年……もう三年半近く前になるかの。ちょうどこの客間で、おぬしの今座しているあたりに立っての、震えながらおぬしの命を丞相に乞うておった。いったいあのかよわき娘のどこにそれほどの激情が息づいていたのかと不思議になったものよ。のう領主殿」
相対する男の表情を見やって、琵琶師は苦笑した。
「罪悪を?」
中立を掲げていても、長く魑魅魍魎の跋扈する宮をくぐり抜けた身の上だ。事情も何も明かさぬ若者の言葉をそっくりそのまま聞き入れることはできない。
ひとを動かすにはそれ相応の対価がいる、と琵琶師は考えている。金。利益。共通の目的。あるいは忠義心、愛情といったものでもよい。何をも差し出さぬ者に、何かを与えることはできない。ここで己の問いに対して、そのようなもの、と雪瀬が一笑に伏せば、琵琶師はこの件を引き受けぬ、と腹に決めていた。
しばらくの間、雪瀬から返事は返らなかった。やがて、小さく息がつかれて、「夢を、見るのです」と呟く。
「むすめの夢」
先ほどまでのふてぶてしさが嘘のようなやわい声だった。そんな自分に向けてだろうか、淡い苦笑をして、雪瀬は続けた。
「娘がひとりで泣いている。泣いている声だけがいつも聞こえている。その声があまりにもいとけなくて、今にも途切れそうで、探して、さまよい歩いて、だけど、ようやくつかまえたその瞬間、娘は消えるのです。花のように。そうして俺はいつも己の愚かしさに気付く。娘の手を、取るべきではなかったのだと。繰り返し。繰り返し。後悔する。俺のような者が手を伸ばさずとも、やがて、しかるべき男が娘を見つけるでしょう。俺はただ、それを待っていればよかったのだと。――わらわれますか」
琵琶師は口を閉ざした。もとよりこちらの答えなど欲してなかったのだろう。雪瀬は手のひらで温めていた湯椀をことんと皿に戻した。
「先ほどの弦の件。お受けいただけますか」
「修繕にかこつけ、同じ筝に替えてしまえばよいのであろ。ただし、誰の目にも触れずやりおおせるかまでは約束できぬ。それを承知の上ならば」
「こちらからひとり見張りをつけます。それで如何でしょう」
「そやつの名は?」
「無名。この男です」
それまで背後で黙然と座すだけであった巨漢の男を示して、雪瀬が言った。男に一瞥をやり、「あいわかった」と琵琶師はうなずく。そちらには明るくはない琵琶師であるが、男には幾度もの戦場を越えてきた者特有の武の気配が見えた。
「ありがとうございます」
ずっと張り詰めていた雪瀬の気配がほのりと緩んだ。こぼれた微笑はまだ年相応の無防備さがあって、のう領主殿、と琵琶師は律儀に礼をして立ち上がった青年の背に声をかける。
「その娘を、あいしておるのか」
濃茶の眸がひとつ瞬く。しかしわずかの間隙を置いて男の口元に載ったのは、倦んだ冷笑であった。
「あいしてなんかいない。あれは、夢の中の男の話です」
辞去の挨拶を済ませると、雪瀬は供の男を連れて下女の開けた襖をくぐる。老朽した床板をしばし軋ませていた足音も、幾許かのうち途絶えた。物言わなくなった襖から目をそらし、いつの間にか遠ざけていた脇息を引き寄せる。それだけで己の気の張りようが知れた。男はまぎれもなく、戦をしにここに来たのだ。
されど、このとき琵琶師の胸に去来していたのは、男とのやり取りのひとつひとつではなく、最初に「丞相の妾」の話を持ち出したときの雪瀬の表情だった。
まるで年端のゆかぬ幼子が意地を張るような顔をしておきながら。
嘘吐きめ、と頬杖を開いて、老爺は苦く嘆息した。
*
『稲城。たいそうみすぼらしくて汚いけものがおるぞ』
逃走の果てに出会った少年は、煌かんばかりの白い美貌をひそめて高慢にこちらを見下ろしていた。
雨だった。水無月の、ぬるい霧雨が間断なく降っていた。
彼は虱の沸いた髪に、着古したぼろ布を纏わりつかせた格好で、ぼんやり目の前にたたずむ少年を見上げた。食すことをやめた彼の身体は痩せ細り、垢や泥といったもののこびりついた肌は浅黒く、唇はひび割れて、眸は茫洋とどこぞやを見つめている。一瞥では死人と判別がつかないが、ひゅうひゅう、からから、と鳴る男の咽喉の音だけが耳障りに男の生命を主張していた。
『おまえ臭いな』
少年は降りしきる雨に濡れるのも構わず、絹の水干を揺らしてかがむと、興味深げに男の顔をのぞきこんだ。頬に触れようとする。反射的に、腰に佩いていた小刀を薙いだ。だが、それは少年の両脇を固めていた護衛らしき男たちによって弾かれる。他愛もなかった。彼はぬかるんだ泥の上に転がされ、砂利水を呑んだ。水干の袖を口元にやって一部始終を眺めていた少年は、『こやつ本当に牙を剥いたぞ』と何やらひとり楽しげだ。
『皇祇さま!』
護衛たちの制止を押しのけ、少年は地に伏せていた彼の顎をぐいとつかむ。翠の眸が何かを見つけた様子で、細まった。
『それにこやつ、きれいな目の色をしておる。夜明けのあおだ。――稲城。この獣を飼いたい』
一瞬大人びた顔を見せたかと思えば、稲城と呼ばれた老爺にねだる姿は年端のゆかない幼子だ。彼は首を振って弱く抵抗をしようとした。この期に及んで、己は別のものの所有物であるという意識があった。
しばしの押し問答の末、少年は稲城という老爺を無理やり言いくるめたらしい。白皙の頬を花色に染めて彼の腕を引くと、『おまえはおれのものだ』と宣言した。
『名はあるのか、獣。おれは、第十九皇子皇祇様だ』
それから二年ほどの歳月をこの少年と、過ごした。
少年は甘やかされて育った子どもらしく、たいそう高慢で、幼く、癇癪持ちであり、そばに置いた彼をよく殴り、蹴った。彼はことさら抗う風でもなく少年にいたぶられるままになっていたので、それがまたこの少年を苛立たせるらしい。一度などは鼻の骨を折られ、侍従の稲城が悲鳴を上げた。
少年はまた、よく泣いた。ひとつでも気に入らぬことがあると、そこら中に響き渡る金切り声で、四肢をばたつかせ、嗚咽する。彼が特段案じる風でもないのがつまらぬらしい。泣きながら、この獣ちくしょうめ、しんじまえ、と彼の背を足で蹴った。
こうも違うのか、と為されるままになりながらも彼は自嘲せざるを得ない。
この少年と歳の違わぬ、かつて彼の仕えていた少女は彼の前で一度だって涙を見せることはなかった。いつも背筋を凛と張り、前のみを見据えていた。彼の泣き濡れた頬を、小さな手のひらで包んでくれもした。ゆずはさま。懐かしい音階は口にしようとすると、虚しく咽喉を鳴らす。
『おまえは、何故おれに従わぬ。おれを見ぬ』
皇祇は高慢で幼く、癇癪持ちであったが、そういうことばかりに何故か聡い。その日も彼をいたぶるだけいたぶった挙句、そんなことをぽそりと呟いた。
『何故おれを見ぬ。おれの声を聞かぬ。おれを愛さぬのだ』
ふっくらした唇を切れるくらいに噛んで、眉間を寄せ、視線を俯かせて。その横顔に、何やら覚えがあった。わたしのかおだ、と気付いたときには、少年の頬を伝う涙に指を触れさせていた。触るな、と少年がぴしゃりと手を払う。それで、一度手をのいたが、少年が水干の袖で頭を抱えてしゃくり上げ始めたので、再び頬に触れた。次は拒まれなかった。嗚咽する少年の頬は、指先がじんと痺れるくらい熱かった。
なかないでください。久方ぶりに咽喉に己の声が通った。
緩慢に続いていた日々に異変があったのは、少年に出会って二年が経った夏の終わりのある日のことだ。宮に戻ってきた少年の顔が蒼褪めていた。普段はひとに当り散らすことしか知らない少年が塞ぎこみ、物を食べようとしない。
兄上のおばけに会ったのだと、皇祇はやっとの思いで中に通してもらえた彼にぽつりぽつりと語った。このときの『兄上』とは、第四皇子四季のことである。ここしばらく表に姿を見せていない皇子であったが、迷い込んだ宮で、その姿を見かけたのだという。四季皇子は、もとの溌剌とした顔が見る影もなく痩せ細り、ものも喋らず、目も見えず、耳も聞こえず、床に伏していた。彼はそのときは知らなかったが、皇子の病は花病という不治のものであった。花病は身体のかたちを崩す。幼い少年にとって、これはいたく凄惨に映った。
しばらく床に臥せっていた皇祇だったが、夏が過ぎ、楓の葉が少しずつ赤く染まり始めた頃、唐突に万葉山に登り、杜姫の墓参りがしたいと言い出した。護衛を勤めていた市松という男が進言したらしい。この、傲岸不遜でありながらもどこか繊細なところのある皇子がたびたび母親の墓に詣でていることを周囲の者たちは知っていた。
皇祇たっての意向で、供をさして率いぬお忍びでの墓参りとなった。市松という男、それから彼も少ない護衛のうちに数えられている。そのとき、何故いつもはせぬ皇祇の供を彼のほうから買って出たのか、あまり判別としない。ただ、市松という男に、彼は言い知れぬ嫌悪とある種の予兆を抱いていたのだった。
事件は昼に起きた。万葉山の登山道の途中で輿を下ろし、休みを取っているさなか、黒衣を纏った男たちが皇子の召す輿を目掛けて襲ってきたのだった。見れば、皇祇の護衛であるはずの市松もまた抜刀し、こちら側に切っ先を向けている。
ああ、と諦念にも似た気持ちで彼は事の次第を理解した。なんのことはない、市松という男に抱いた言い知れぬ嫌悪。それはかつての自分に似たにおいを嗅ぎ取ったに過ぎなかったのだ。
皇祇に向かった刃のひとつと彼は斬り結んだ。ギン、と刃が擦る。久しぶりの感覚だった。ひとりを斬り捨て、襲い掛かる別の者らを斬り伏せていく。腕を浅く斬られたが、彼は意に介さなかった。もとよりこの程度の負傷で死ぬ彼でもあるまい。最後に市松と刀を交え、これは胸から腹までをばっさり斬ったのち衣川に落とした。
いったいどのようなゆえある姦計なのか。市松の背後に誰がしか手を引く者がいるのは確かだが、たかだか皇祇の飼い犬に過ぎぬ彼には事の全貌など知れるわけがない。ひとり生け捕りにした男がいたので、それに口を割らせようとしていると、『待て』と木立の合間より現れた男が言った。見知らぬ顔だ。抜き身のままだった刀の切っ先を上げた彼に、男は朱鷺皇子の遣いを名乗り、未だ輿の中で震えている皇祇の腰に佩かれた懐刀を取り上げると、その鞘を衣川に投げ捨てた。
第十九皇子皇祇の死は、朱鷺皇子の計略によって偽装された。
皇祇の身はしばらく朱鷺皇子のもとにあったが、市松背後の手のうちの者が回ってきたのか、今は葛ヶ原領主橘雪瀬が預かっていると聞く。再び寄る辺を失った彼は、すでに衣川の渡し守に身をかえていた。
万葉山の峰に日が沈む。
船を引き上げた彼は、船頭からもらったわずかばかりの日銭を持って、家路に着いた。彼の家は衣川近くの流れ者たちが多く住まう長屋の一角にある。銭さえ払えば、一間を貸してくれる長屋主であるので、素性を語りたがらぬ彼には住みやすい。途中の露店で蕎麦を食らいて夕餉を済ますと、彼は入り組んだ小道を慣れた足取りで歩いていく。
こつ、こつ、と木の棒が地を擦る音が耳につき始めたのは、角をふたつみっつ曲がったあとだ。こつこつ。こつこつ。それは離れぬ影のように彼に付きまとい、彼が足を止めるとまた音もやむ。
ふたつの音だと、聞き分けた。
ひとつは杖。だが、いまひとつが判じられぬ。地を這いずるにも似た耳障りな摩擦音。彼は目を瞑り、意図して足を止めた。腰元に挿した小刀の柄を握りこむ。
「隠れ鬼さん、つぅかまえた」
背中に柔らかな感触が当たったのは刹那だ。それは遊ぶように軽やかであるのに、それでいておぞましいまでの殺気を放っている。身体が、動かせない。
場違いに明るい哄笑が耳朶を打った。
知らず息をひそめた彼の背筋を筆先でなぞりつつ、男は嗤う。
「久しぶりやねぇ。ずっとあいたかった。ずっとずっと探していたんよ。俺から右足を奪ったお前をさ」
そして、男は。
橘真砂は、落日の燃える赤の中舌なめずりをする。
「会えてうれしいぜえ、――『暁』」
忘れ去っていた、それはかつての彼の名だった。
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